エヴァ長編

17 Buds of jealousy

 水よりわずかに赤いL.C.L.が、の全身を満たしていく。もはや日常の一部ともいえる、ハーモニクスのテストだ。 いつもは息を殺してじっと不快感に耐えるだけだったが、今回はは感覚を研ぎ澄ませるように柔らかく目を瞑っていた。 (母さんの名残を感…

16 Interference

 全ての生命が始まり、全ての生命が終わる場所。確かな形を持ちながら、現実には存在しない場所。 ガフの部屋。 そこに、カヲルはいた。しかし、彼一人だけではなかった。 カヲルは眠っている目の前の少女に手を伸ばした。 「……」 その名前を呼んでも…

15 re-Calling

 「……誰?」  ドアをノックする音がして、レイは視線を走らせていた本から顔を上げた。NERVの一角、レイに割り当てられた待機用の部屋だ。座っていたパイプベッドから脚を降ろし、ドアの近くまで寄る。 扉の向こうの人物は、遠慮がちに声をかけてき…

14 Sinking

 水音が耳に心地良い。は手元のテキストから顔を上げて、美しく透き通るさざ波を見つめた。 波と言っても、ここは海ではない。NERVに備わっている温水プールだ。窓に近い一番奥のレーンでは、白い水着を着たレイが涼やかに泳いでいる。  「今頃トウジ…

13 Knight and Princess

 『むかしむかし、あるところに、お姫様と騎士がおりました。 騎士はたいそう姫を大切に思っており、姫もそんな騎士のことをずっと側に置いていました。 ある日、姫は遠く離れた国へ嫁ぐことになりました。 私も連れて行ってください。そう騎士は言いまし…

12 I doll

 「Hallo! !」 「おはよう、アスカ」  アスカが日本に来てから数日が経った。と同じ第壱中学校の制服に身を包んだアスカが、朝から元気に声をかけてくる。は眠い目を擦って挨拶を返した。  「どうしたのよ、。元気ないわね」 「寝不足なだけ。…

11 Prey

 予備の弐号機用プラグスーツに着替えたは、彼女と共に弐号機のエントリープラグ内に乗り込んでいた。アスカが操縦席に座り、はその後ろで適当な所に腰掛けている。 弐号機の内装や計器の位置は10号機と大して変わらなかった。どちらも同時期に開発された…

10 We are friends, aren’t we?

 太平洋を横断する船のデッキで、少女はぼんやりと朝日の差し掛かった水平線を見つめていた。その隣に、飲み物の缶を持った男性が近付いて来る。  「おはよう、アスカ。調子はどうだい」 「まあまあね。そろそろ船旅にも飽きてきちゃったわ」 「ははっ、…

9 Be proud

 控え室にはガンゴンと金属のひしゃげる音が鳴り響いていた。紙が燃える焦げ臭い匂いも立ち込めている。それはつまり怒りを隠そうともしないミサトがロッカー(他人の会社の物だ)を蹴り壊す音であり、能面の下に怒りを堪えるリツコがパンフレットを燃やす匂…

8 Unordinary

 A4の紙面の真ん中に三つの長方形が並んでいる。机に頬杖をつきながら、は教壇で同じ紙を持っている教師を見上げた。 「というわけで、皆さんには今週末までに進路希望調査表を書いて提出してもらいます。それを元に来週以降の三者面談の内容を考えるので…

7 Reprisal

 が意識を取り戻した時、そこは南極だった。  (あ、またか……)  白い塩の柱と赤い海。第四の使徒戦が終わった後にもこの地へやってきていた。ということは、これは夢か。 夢にしては、やけに感覚がリアルだった。肌を浚う生温い風も、どこかへ打ち寄…

6 Let’s be friends.

 シンジが家出から帰ってきてから1週間が経ち、生活が日々の装いを取り戻し始めた頃。 ある日の体育の授業で、シンジは女子がバレーボールをしているのをぼーっと見つめていた。 「レイ!」 「ええ」 バァン、とボールが体育館の床に打ち付けられる音が…