久しぶりに会った彼女は、ぞっとするほど美しくなっていた。
ショウに敗北して以来、ウォロは一人で黙々と神話の研究を進めていた。ヒスイ地方のあらゆる箇所を巡り、時には海の向こうにまで足を伸ばした。資料が集まり、調査のためにもう一度シンオウ神殿に訪れる必要が出てきてしまった。
正直なところ、これまで神殿には意図的に近付かないようにしていた。彼処は自分の物語が終わった場所であり、彼女がアルセウスに認められた因縁の地だ。今思い出しても腹が立ってくる。
だが、神話の謎の前には、ウォロ個人の感情など些細な問題だった。ショウ本人にさえ会わなければ、どうにかなるだろう。
そんなわけで、ウォロは数年ぶりにシンオウ神殿へと向かっていた。
神殿に佇む影を見つけた時、ウォロは思わず引き返しそうになった。人影だ。こんなところに来る人間など、彼女以外にいるわけがない。百歩譲ってもコギトだが、あのコギトにここまで来る体力と気力があるのかは疑わしい。
しかし、ウォロは目を凝らした末、その影はショウではない、との判断を下した。背格好が異なっていたのと、その影から神性のようなものを感じたからだ。
新種のポケモンかもしれない。
そうなると、ウォロに引き返す選択肢はなかった。ウォロは足早に神殿までの階段を登った。
ウォロの予測は、当たっても外れてもいなかった。
神殿にいたのは、おそらく、ショウだった。なぜおそらくなのかと言えば、外見がウォロの記憶のものと全く異なっていたからだ。
とても人間とは思えないほど美しくなっていた。髪は長く伸び、服も調査隊のものとは異なる、白く装飾の少ない布を纏っていた。別人としか思えない中で、腰から下がる調査隊の鞄とてんかいのふえだけが、彼女がショウであることをかろうじて証明していた。
ショウはウォロを見つけると、懐かしいものを見た、とでも言いたげに目を細めた。
「お久しぶりですね、ウォロさん」
その声を聞いただけで、ウォロはぞっと鳥肌が立つのを感じた。
それは、嫉妬や嫌悪のような与しやすい感情ではなかった。どちらかと言えば、初めてギラティナに会った時のような薄ら寒さに近いものだった。
本当にショウなのか?
外見も声も性格も立ち居振る舞いも、彼女を構成するなにもかもが変わったように見える。しかも、ただ変わったというだけではない。彼女から漂うのは、人を超えた存在としての威風だった。
自分が世間から離れていた数年間、いったい何があったというのだろうか。目の前にいる、人間とも呼びたくないこの生き物は、本当にあの空から落ちてきたショウの延長線上に存在するのだろうか。
考えた末、ウォロはいつもの作り笑いを浮かべながら、ポケモンの入ったボールを出した。
「ご無沙汰しております。よろしければ、腕比べなどいかがです?」
「はい、喜んで」
相手の人となりを知るには勝負が一番手っ取り早い、というのがウォロの持論だった。ショウはしとやかに頷いて、ポケモンボールを手に取った。
一瞬、ウォロは彼女がアルセウスを出してくるのではないかという恐れを抱いた。この様子だと、彼女は確実に図鑑を完成させ、アルセウスを従えているだろう。初手でアルセウスを出す、などという嫌がらせをされたら、流石にウォロも握り拳を振るう手が止められないかもしれない。
だが、ショウが出してきたのはレントラーだった。
ほっと安心したのもつかの間、ウォロは再び全身に緊張が走るのを感じた。
こいつ、強い。
ショウのレントラーからは、野生のオヤブンポケモンに出会った時とは比べ物にならないほどの威圧を感じた。場に出ただけで、空気がずんと重くなる。とても野生に存在してはいけない生き物だ。主人がああなら、ポケモンもこうなるのか。本当に、何がどうなってこうなったのだろう。
ウォロはガブリアスを出すと、努めて勝負に集中するようにした。自分とて、この厳しいヒスイの地を生き抜いてきたのだ。再び負けてなるものか、とも思った。
だが、結果はウォロの完敗だった。
「……お強い……ですね」
ウォロは地に伏した最後の一体をボールに戻した。それは紛れもなく、ウォロの本心から出た言葉だった。
以前ショウと戦った時は、ギラティナの存在を抜きにしてもかなりの接戦を繰り広げていた。しかし、今回は全く話にもならなかった。手持ちの総力を上げ、ショウの手持ちの三体目を引きずり出したのまでは良かったが、それ以上どうにかできるとも思えなかった。実力、才能、運、何もかもが彼女と渡り合うには足りていなかった。
だが、その実力と才能と運を身につけたところで、果たして勝てる相手だろうか。
勝負をしてわかったのは、今のショウが次元の違う存在だということだ。
こうなると、もはやウォロに嫉妬や憎悪は湧いてこなかった。あるのはただ、目の前の人を超えた何者かに対する興味だけだ。
ウォロは本心からの笑みを浮かべて言った。
「素晴らしいですね! ジブンがいない間に何があったのか、アナタの話を聞かせてほしいです」
「いいですよ。……暗くなってきましたね、火を起こしましょうか」
そう言うと、ショウは当然のようにその場に薪を集め、ポケモンに火を付けさせた。
——ここは神殿だぞ?
そう思ったが、ウォロは口を噤んだ。この崩壊した神殿で夜を明かそうとする彼女の動作が、あまりにも自然だったからだ。
揺れる炎を見つめながら、ショウは淡々とこの数年のことを語ってくれた。
ウォロがいなくなってからも、相変わらずポケモンの生態調査に身を捧げていたこと。ギンガ団の団員ランクもマンテンボシになったこと。そして、図鑑を完成させたこと。
「ウォロさんには気の良い話ではないでしょうが、アルセウスにもお会いしました」
まあそうだろうな、と思った。確かに気の良い話ではないが、話に出るだけならなんとか耐えられる。
ウォロは眉間に皺が寄るのを堪えて言った。
「そういう格好をするようになったのは、アルセウスと会ってからですか?」
「いえ、違います。これはポケモンたちにもらいました」
「……」
ウォロは思わず顔をしかめた。
基本的に、衣食住をポケモンに頼るべきではない。それは人間としての矜持というより、一神話学者としての教訓にも近い理解だった。ポケモンと人は違うものであり、そうであるべきなのだ。例えどれだけ近くなろうとも、人間として超えてはならない一線というものがある。
ショウは抑揚の少ない声で話を続けた。
「伝説のポケモンたちを数多く従えるようになり、村の人々から尊敬されるようになりました。私を英雄と呼び、崇め奉るものも出るようになりました。私はそれが窮屈で、あまり村に戻らないようになりました」
「ラベン博士やテルさんもいるでしょうに」
「そうですね。ですが、彼らは彼らなりに忙しいのです」
ヒスイの各地ではベースキャンプを村にする計画が進んでいるから、博士やテルもそれに手を取られて忙しいのだろう。しかしその口ぶりだと、ショウはかなり長い間人里に降りていない様子である。
彼女は傷一つない手で薪を焚べた。
「自然の中で暮らしていると、ポケモンの言葉がわかるようになりました。最初はポケモンたちとの会話を楽しんでいたのですが、そのうち畏れ多いと言ってあまり話してくれなくなりました。どこで寝るにもポケモンたちに気を遣われるようになったので、最近はよくこのシンオウ神殿で寝泊まりしています。とても快適です」
「…………なるほど」
衝撃的な内容ではあったが、ウォロはショウの話を完全に理解した。
一言で言えば、彼女は人間を辞めたのだ。野生のポケモンや、伝説のポケモンたちとの密接な交流を経て、人よりも神に近い存在になった。きっとそれには、認めたくはないが、アルセウスの存在も一枚噛んでいる。人との交流を避けたり、神殿に寝泊まりして人間らしい暮らしを捨てたのも良くなかっただろう。
と同時に、自分の感情がわからなくなった。
人の形をした何者かに対する恐怖。人間の枠を捨て、神の座に近付いた者への興味。本来なら自分がそうなりたかったという嫉妬。初めて会った頃のあどけない彼女が消えたことへの衝撃。
そして、アルセウスを従え、アルセウスに最も”近くなった”人間が、今まさに手の届く場所にいるという興奮。
そのよくわからない感情のまま、ウォロはショウを神殿の床に押し倒した。
「……どうかされましたか?」
透き通った瞳がウォロを見つめる。それはあまりに美しくて、まさしく夜の星空のように感情の乗らないものだった。
ウォロはなんだか気分が悪くなってきた。
目の前にいるショウは、少なくともウォロの知らないショウだった。数年前、ウォロの野望を阻止しようと必死で立ち向かってきた彼女は一体どこへ行ったのか。
なにかあの頃の痕跡が残っていたりしないだろうか。もしくは、身体に人ではない特徴が現れていたりしないだろうか。
それを確かめるため、ウォロはショウの服を引っ剥がした。
「ウォロさん?」
まっさらで芸術的とさえ言えるほどの裸体だ。こうしてひん剥かれてもなお、ショウは嫌な顔ひとつしない。不思議そうにウォロを見つめているだけだ。
頭の先から足の裏まで一通り見たが、特に一般的な人間と変わったところはなかった。火に手を近づければ熱いと言うし、皮膚をつねれば痛いと言う。脇腹をくすぐると、やや不快そうな顔をされた。
おそらく、肉体的に何かが変わっているわけではないのだろう。変わったのは精神だけだ。
となれば、ウォロのするべきことは、ショウの精神を揺さぶることだった。
腕比べ以外で、彼女に動揺を与える方法。
手足を潰そうが心臓を突き刺そうが、彼女に痛み以上の何かを与えることはないだろう。ウォロがどんな話をしても、彼女の表情が大きく変わることはないだろう。
思い付く方法は一つだけだ。
ウォロはショウの首筋を撫でると、そこに唇を這わせた。
「……!」
ショウの震えるような息遣いが聞こえ、ウォロは確かな手応えを感じた。
わざと微かに息を吐きながら、ショウの柔らかな皮膚を食む。味見をするかのように、ぺろ、と舌で舐めると、肌の下の筋肉が明らかにこわばった。
「な、にを……」
突然の奇行に及んだウォロに、ショウは明らかな困惑を浮かべていたが、そこに拒絶の色はなかった。まるで野生のポケモンでも観察するかのように、ウォロの行動を眺めている。
だが、いくらショウでも、これからウォロがしようとしている行為を知らないはずがなかった。
肌に口付けを重ねながら、ウォロは彼女の胸に手を伸ばした。吸い込まれそうなほど柔らかな脂肪を、壊れてしまわないようにそっと掬う。先端を口に含むと、頭上から息を詰めるような音がした。
「ん……」
快とも不快ともつかない顔をして、ショウはウォロから与えられる刺激を黙って受けている。だがその頬は、先ほど話をしていた時よりも確実に赤くなっていた。
ちゅう、と音を立てて胸の頂を吸う。あくまで優しく、だが追い詰めるように、舌と指で乳房を愛撫する。そうやって彼女の体を愛でる度に、重なる肌がどんどん熱くなっていくのを感じる。彼女の唇から切なげな吐息が漏れるたびに、ウォロは目の前の光景が歪んで見えた。
まるで女神をこの手に抱いているかのようだった。
すごく興奮しているのに、すごく冷めている自分もいた。これがあのショウでなかったら、ウォロはもっと素直に喜べただろう。ショウを抱くなら抱くで、もっと手酷く扱って屈辱に泣かせたかった。これはこれでそそるかもしれないが、なによりずっと試されているように感じるのが嫌だった。
形の良いへそをなぞり、腹から足の付根までを見せつけるかのように撫でる。薄く筋肉のついた良い身体をしていた。内股を辿って秘所に指を這わすと、そこは僅かではあるが蜜を零していて、雄を受け入れるための準備をしていた。
「っ、は、ぁあ……」
探るように指を一本入れると、ショウの口から喘ぎ声が漏れた。瞳は遠く、どこかウォロではない一点を見つめている。
ショウの中は熱くて狭くて、生き物のようにウォロの指を締め付けたり離したりしていた。上壁にあるざらざらした部分を擦るように動かすと、彼女の顔がぴくりと歪んだ。
「ふっ、あ、それ、は……」
無表情だったはずの顔に、明らかな快楽の色が現れる。感じているであろうことは、膣の濡れ具合からもよくわかった。指をもう一本増やしても、それほど抵抗なく飲み込まれていく。
だんだん水音が聞こえだして、そのうち、彼女の脚が不随意に震えた。
「あ……な、にか、くる……!」
微かな悲鳴をあげ、ショウが天を仰ぐ。細い喉が息を吸って、止まった。
びく、びく、と瀕死の生き物のような動きが止まり、彼女はくたりと四肢の力を抜いた。膣から指を引き抜くと、とろみのある愛液が絡みついている。なんだか甘い匂いがしたが、舐めてみても無味だった。
絶頂の余韻に浸っているのか、ぼんやりと宙を眺めたままのショウの顔を、ウォロは覗き込んだ。
「どうですか?」
彼女から何か意味のある応答が返ってきたら、もうこれでおしまいにするつもりだった。
だが、彼女はしばらくじっとウォロを見つめた後、感情のない声で答えた。
「……どう答えれば、貴方は満足ですか?」
——失望と怒りで血管がぶち切れそうだった。
煽っているわけではなく、本当にわからない、という顔をしている。せめて煽られている方が百倍マシだと思った。思いつく限りで一番最悪な返答だ。
ウォロは深い溜息をつくと、ショウの膝裏を持ち上げた。まだ硬度を保っている自身を、彼女の入り口に擦り付ける。それでも、ショウは眉一つ動かさなかった。一体何を考えているのか、何も考えていないのか。
その顔色を塗り替えられたらそれだけで良い。
ウォロは奥歯を噛んで、ショウの中に入っていった。
「う、あぁ……!」
「っ……」
互いに苦渋の表情を浮かべる。彼女の中は狭くて、きつくて、熱かった。繋がっているところから溶け出してしまいそうだ。
ゆるゆると腰を動かすと、ショウが不規則な息を吐いた。膣を擦られる快感か、内臓を揺すられる不快感か、顔を顰めて刺激に耐えている。それでも、ショウは嫌がる素振りは微塵も見せなかった。
気持ち悪い、と思った。
拒絶しないのは、ウォロのことが好きだから、などという甘ったるい理由でないことだけはひしひしとわかった。彼女にウォロへの愛があるとすれば、それは万物にあまねく注がれる無償の愛だ。そんなものに何の価値があるだろう。
時空の裂け目を開き、イチョウ商会の一員として彼女に近付き、信頼を勝ち取り、その信頼を最悪の形で踏みにじったウォロという男を、そこら辺の有象無象と一緒にするなどありえない。あってはならない。彼女がウォロに向けるのは、許しの微笑みなどではなく、ウォロが抱いているのと同じくらいの憎悪でなければならないのだ。
ウォロはショウの首に手をかけた。
「嫌ですか? 嫌ですよね。嫌だったら抵抗してください」
だが、ショウはじっとその大きな瞳でウォロを見てくるだけだった。
ウォロは手に力をかけた。それでもショウは嫌がらない。
気分の悪さが深刻になってきた。わざと懇願するように言った。
「嫌がってくださいよ」
ウォロの知るショウは、こんな女じゃなかった。ころころと表情が変わって、こんな人形みたいな女じゃないはずだった。
襲われたら蹴飛ばしてでも抗うはずだ。首に手をかけられたら恐怖で顔をひきつらせるはずだ。
ショウは本当に死んだのか。アルセウスに認められたからなのか。アルセウスを従えたからなのか。
そんなの、そんなの——
「嫌がれよ! なあ!!」
渾身の力を込めて細い首を握り締めた。瞬間的に膣内が絞まって、ウォロは彼女の中で果てた。
体が泥のように重かった。ショウに覆い被さって息を整えていたウォロは、彼女の反応がないことに気付いた。
まさか、死んだのか。
驚いて上体を起こしたが、単純に自分がまだ首に手をかけていただけだった。ぱっと手を離すと、ショウの身体が跳ねた。
「——っ!!」
ひゅっ、と空気が気管に入る鋭い音がした。その直後、ショウがげほっ、ごほっと血でも吐くかのような重い咳を繰り返す。吸っては咳き込んで、陸にいるのに溺れているかのようだった。
繋がったまま上体を起こして噎せるショウの顔は、耳まで赤くなっていた。色付く程度の可愛らしいものではなく、どす黒くさえ見えるほどだ。
生理的な涙で潤んだ目で、彼女がウォロを見上げた。僅かな唾液を飲み込んで、紫色になった唇が動いた。
「急に襲ってきたかと思えば、首まで絞めて……貴方本当に何がしたいんですか?」
——その時、ウォロの世界が止まった。
すごく迷惑そうな顔だった。
今まで一度も見たことがないくらいに嫌そうな顔をして、彼女は明確にウォロを拒絶した。紅潮した顔も、嫌悪を滲ませる瞳も、引きつった口元も、全てが神性とまるで程遠いものだった。その人間くさい表情が、たった一人ウォロだけに向けられていた。
ウォロは喜悦に顔が歪むのを感じた。
「く……はは……あははははは!」
人生で最高の気分だ。
髪をかきあげて笑うウォロを、ショウが理解できないと言わんばかりの眼差しで見上げてくる。その肩を掴み、もう一度地面に押し付けた。
「勝手に人をやめてもらっては困ります」
ウォロはショウの唇に噛み付いた。乾いた唇を割り、僅かな隙間から舌をねじ込む。今度は、ショウは明らかな抵抗を示した。
「ん、ぐっ、うぅ……!!」
横を向こうとした彼女の顔を、顎を掴んで固定する。逃げる舌を追い詰め、わざとゆっくり舌同士を押し付けあわせると、くぐもった悲鳴が上がった。よほど嫌だったらしく、ショウがウォロの髪を掴んで引き剥がそうとする。ぷち、と数本の毛が切れる音と共に、結んでいたウォロの髪紐が解けた。
ぱさ、と髪の束がショウに降りかかる。
「は……」
唇を離すと、金色の帳が降りた世界の中に、ショウしかいなかった。同様に、ショウの瞳の中にも、ウォロしかいなかった。
二人きりの世界の中で、一方は嫌悪と恐怖を、もう一方は狂喜と恍惚を、刃のように相手の喉元に向けていた。
「……はは」
ショウの火花のような視線を受けながら、ウォロは嬉しすぎて涙が出そうだった。
今の彼女に、鏡を突きつけて自分の顔を見せてやりたいと思った。それはもう酷い顔だ。こんな表情のできる人間がどうして神になれると思うのか、何時間にもわたって問い詰めたいくらいにうつくしい顔だ。
そして、彼女にその新しい人間性をもたらしたのは、紛れもなくウォロだった。
そう考えると、信じられないくらいの興奮がウォロを襲った。
「う……」
「どこに行くんです?」
中に入っているものが大きくなる気配がしたのか、ショウがぎょっとした顔をして身じろぎをした。それを、ウォロは彼女の腰を掴んで引き戻す。呆気ないほどの軽さだった。
人に戻った矮小な十代の少女は、ウォロのつくった檻の中で震えていた。
「や、やめ……」
先程まではずっと聞きたくても聞けなかった言葉を、ショウが真っ青な顔で口にする。でも、もう時間切れだ。
ウォロは彼女の両脚を持ち上げ、押し潰すように体重をかけた。
「やめない」
「あぁあっ!!」
もう一度、熱い杭を彼女の中に打ち付ける。もう二度とどこへも行かないように、何度も何度も杭を打つ。
天になんて行かせない。
神になんてならせない。
どんな手を使ってだって、自分のいるこの地上に縛り付けてやる。何年、何十年、何百年が経ったとしても。
ウォロは世界で一番やさしい笑みを浮かべた。
「愛してる」
神の翼は燃え尽きた。