Δ考察 6~11話

2巻分の考察を進めていきます。

【6話】

・ドラゴンを前に慌てる弟子s。
 テティア「どうしてこんなことに……!」 
 アガット「全部あなたのせいよ、ココ!」
 ココフルボッコのターン。
 これを言われたココは一見そこまで気に留めていないようですが、14話の悪夢イベントで結構引きずっていたっぽいことがわかります。ココは魔法オタクで天真爛漫なように見えますが、4話の「自分のしたことの責任〜」という台詞や14話の悪夢の内容などからわかるように、実際はかなり責任感が強く思考が自罰的です。よくショックそうな顔してますもんね。

・弟子sを探すキーフリー。
 タータ「つばあり帽ってまさかあの……?」
 キーフリー「そう。古の時代の帽子や仮面で顔を隠し、禁止魔法を使う危険な連中だ」
 出てくるつばあり帽子のデザインがおしゃれ。ところでイグイーンの被っている帽子にはつばがありません。つばあり帽、というのは帽子のつばの有無というより顔が見えるかどうかが重要みたいです。、つばあり帽の偉い(っぽい)人であるイグイーンの帽子につばがないのは今更ながら違和感を覚えます。イグイーンの帽子自体、仮面さえなければその辺の魔法使いが被っていてもおかしくないようなデザインで、今まで見た帽子の中ではキーフリーのデザインに最も似ています。意味深ですね。
 
 

【7話】

・ドラゴンを眠らせることに成功。
 幸せそうに眠っている、とのことなので、このドラゴンはつばあり帽に操られているわけではなく、野生(?)の個体をそのまま連れてこられたのだと推測されます。
 塔の側面にはつばあり帽の魔法陣が描かれています。直径約2~3m、禍々しい感じの紋が中央にあります。おそらく閉鎖空間を作る魔法でしょう。作画ミスでなければ、魔法陣の矢は完全に循環しているのではなく左下方向で収束しています。似たような矢が扉窓の魔法陣にも描かれています。
 そのうち魔法陣特集とかもできたら……良いな……

・気絶しているココに話しかけるイグイーン。
 イグイーン「やぁ、ココ。ずっと長い間……蒔いた種が芽吹くのを待っていたよ」
 1巻の考察でも触れましたが、つばあり帽は10年ほど“新たな魔法使い”が出現するのを待っている試算です。そりゃ長いよな。
 「私が用意した『課題』はどうだった? 君の成長に役立ったかな?」
 とのことで、この空間はイグイーンがココのためにわざわざ用意してくれた道場だったわけですね。つばあり帽はココを利用しようと考えているので、彼女には強く賢くなってもらわなければ困ると。
 「キーフリーからは学べないことを私が教えてあげる」
 キーフリーから学べないこと、とはなんなのか。禁止魔法はもちろんですが、ここではより実践(実戦)的な魔法の使い方を指しているんじゃないかと思います。今回のドラゴン戦しかり、4巻でのロモノーン戦しかり、つばあり帽はココに試練を与えることで、より柔軟な発想が生まれることを期待しているわけです。
 「時が来たら君は——ああ……その時が楽しみだ」
 つばあり帽がココに何をさせようとしているのか、それは5巻考察のネタ用に取っておきましょう。「時が来たら」と言っているので、今すぐ何かをさせたいわけではないことがわかります。
 「そうだ! 贈り物を授けておこう」
 イグイーンからココにプレゼント。その中身は魔墨(とコイン)が入った瓶です。これが2巻後半〜3巻冒頭で惨事を引き起こし、さらには7巻におけるココの精神状態にまで影響しています。

・カルンに無事生還。
 記憶が混濁しているココに詰め寄るキーフリー。キーフリーはつばあり帽を追う手がかりとしてのココに賭けているので、ココの記憶がなくなると非常にまずい……というのもあるでしょうが、キーフリーがかつてつばあり帽に記憶を消されていることを考慮すると、今回はココも同じ目に遭ったのではないかと純粋に心配している面もあると思います。つばあり帽の外道さを一番わかっているのはキーフリーですからね。
 キーフリー「発想は杖さばきと並んで魔法の要になるものだから、これから大切に伸ばしていこうね」
 この後、弟子達とハイタッチしているココの後ろ姿を見ているキーフリーの顔に注目。なんともいえない顔してます。なんの顔? ココの身柄と記憶が無事だったことに安堵しているならもう少し穏やかな顔になると思いますが、口を引き結んで何か考え込んでいるようでもあります。
 この一コマでキーフリーが何を考えているのか当てろというのはなかなか難しいですが、つばあり帽がココを直接狙っていることが明らかになったので油断できない状況になった(とキーフリーが思っている)、ということなのでしょうか。もしくは、つばあり帽と接触しても無事に返されたココを見て、過去の自分を思い返しているのかもしれません。なんにせよ安らぎを得ない男ですね、キーフリー。

・ノルノアに口止めをするキーフリー。
 キーフリー「……誰にも言わないで」
 顔が怖い。キーフリーは根っからの魔警団嫌いです。公務執行妨害とか付かないか心配になるレベル。なぜそこまで嫌いなのかは9話でなんとなく明かされます。
 
 

【8話】

・とんがり帽子のキッチン回。
 この時はまだグルメスピンオフが出るなど誰も想像が付かなかった……。

・魔法の上達法を教えるキーフリー。
 キーフリー「泳ぐのが苦手だったのもあるけど、水に濡れるのが嫌いでね」
 36話によれば、発見時キーフリーの入っている棺桶には水が溜まっていました。水が溜まると溺水の恐れももちろんありますが、土の中はただでさえ温度が低いので、そこに水が溜まってくると低体温症の危険性が爆上がりします。キーフリーにとって水は命を奪いに来るものだったわけですね。それを猛練習によって克服し得意魔法にまで仕立て上げたキーフリーの執念たるや……。
 「どうしようもない焦りがあって急いで学びたいと思うなら、生活にしてしまうのが一番だよ」
 “どうしようもない焦りがあって急いで学びたい”と思っていたのはかつてのキーフリーでしょう。そんな彼が言うと言葉の重みが違います。

・オルーギオと初めて会うココ。
 オルーギオはココが弟子になったということすら知らなかったらしい。1話から8話までそれなりに作中時間が経過していたと思われるのですが、見張りの眼であるオルーギオに何も告げていないとは驚きです。オルーギオなら言わなくても大丈夫だろうと踏んでいるのでしょうが、いくら親友とはいえ舐めすぎ心を許しすぎでは?
 オルーギオ「『つばあり帽』には関わりたくない。この子は魔警団に引き渡す」
 オルーギオはかつてキーフリーに協力してつばあり帽について調べていたことがあります。そんな彼が言う「関わりたくない」は重いです。単純に「つばあり帽が恐ろしいから」という理由だけでなく、キーフリーをつばあり帽に関わらせるとろくなことにならないだろうと何となくわかっているのかもしれません。
 しかしそれを言われたキーフリーの心情たるや。40話でキーフリーがオルーギオの記憶を消したのも、この台詞が引っかかっていたのかもしれません。その辺は40話でまた詳しく触れます。
 
 

【9話】

・オルーギオに魔法を向けるキーフリー。
 キーフリー「ココを連れて行くのは許さない。たとえ親友の君でもね」
 ここにヤンデレの波動を感じて興奮したのは私だけでしょうか。
 オルーギオ「俺に魔法を向けるほどかよ……この子は一体何なんだ?」
 オルーギオは話のわかる人間なので、キーフリーがそこまでココに執着しているとわかるとちゃんと話を聞いてくれます。しかも事情を聞いてココのことを最終的には受け入れているのでもう本当に良い人ですね。キーフリーもオルーギオなら許してくれるだろうと思っていた節があります。
 ココはベルダルート(っぽい人)から正規の許可を得てキーフリーの弟子にしているので問題というほどではないと思います。どちらかというと見張りの眼に黙っていたことの方が問題なのでは……。

・魔警団について。
 魔警団は禁止魔法に手を出した人間や、魔法を見てしまった“知らざる者”の記憶を消す部隊です。魔法界の警察みたいなものでしょう。
 キーフリー「あんな人たちに預けたら、魔法への憧れの気持ちまで消されてしまうよ……」
 キーフリーを死の淵から助けたのは魔警団ですが、ここまでの嫌いようを見るにおそらく、キーフリーは大講堂にいる間何度か魔警団に記憶を消されそうになったのではないかと思います。魔法使いは知らざる者に対して冷淡ですからね。
 「ココから魔法の記憶を消すのなら、僕の記憶も消すべきだろう」
 キーフリーから魔法の記憶を奪ってしまうと何も残らなさそうです。そう考えると、記憶を消されれば人生も計画も全て崩壊するキーフリーが魔警団を蛇蝎のごとく嫌うのは当然かもしれません。
 ところで、秘密をばらした側の魔法使いにペナルティは存在するのでしょうか。秘密を知った側にばかりフォーカスが当てられていますが、ばらした側にも何らかのペナルティはあるはずですよね。作中ではその例がキーフリーしかいない上に、彼は秘密をばらしたことを秘匿しているのでペナルティも何もないですけど……

・オルーギオの部屋に入るココ。
 灯石道はオルーギオの代表作、ということは、ココが幼少(4歳ごろ?)の頃には既にオルーギオの代表作が城下町にも出回っていたということになります。一般的に魔法使いに弟子入りするのが10〜12歳ぐらいだそうなので、そこから魔法の修練を積んで魔法具を制作・発表できるのに4~5年ほどかかるとすると、今のオルーギオやキーフリーは大体20代後半と言ったところでしょうか。見た目的にも大体そんな感じ。
 オルーギオは早速ココに絆されてます。本当……良い人……。
 
 

【10話】

・一般人が助けを求めにアトリエにやってくる。
 アガットは図書の塔の司書を務めるアークロム家の出身です。しかし当主の弟子を決めるお披露目会での盗作疑惑により一族を追放されてしまったという過去があります(33話参照)。何としてもその一族の鼻を明かしてやるため、アガットはとにかく自分の実力を示すことで頭がいっぱいです。当然実務の機会には付いて行きたがります。
 実務、とは“知らざる者”たちのために、現地に赴いて魔法を使うこと。今回やカルンの火事のように知らざる者が直接頼みに来る場合もあれば、39話のように手紙で依頼が回ってくることもあるようです。オルーギオほどの魔法使いともなれば個人での指名ももちろんあるでしょう。

・全員が現場に到着。
 オルーギオが普通に扉窓を描いてますが、それは魔法の使い方バレるうちに入らないんでしょうか。
 アガット「(人一倍努力しても成果が出なければ無意味だわ……! 一刻も早くあの人に証明したいのに……。私は価値のある魔法使いだと……!)」
 彼女の行動原理がよくわかります。闇堕ち一歩前のライバルキャラっぽい独白ですが、アガットは禁止魔法に強い忌避感を抱いているのでつばあり堕ちはなさそうですね。
 オルーギオが馬車に残された人を助けている間、キーフリーは氾濫している川の水を水裂の魔法剣で切り裂いています。がっつり肉体労働です。

・クスタスとダグダが初登場。
 褐色肌の少年がクスタスで、長髪の青年がダグダです。彼らは長いこと出てこなかったのでただの名ありモブか……と思いきや42話以降で再登場します。それなりに重要キャラに昇格しそうなので覚えておきましょう。
 クスタスは一旦助けられたものの、積み荷を取りに戻ろうとして土砂崩れに巻き込まれてしまいます。それに道連れになるココ。アガットはツンデレなのでしっかりココのことを心配しています。

・アガットのトラウマ再び。
 最初に出てきた「さぁ見せてみなさいアガット」は彼女の母親の台詞と思われます。アガットが再三言う「あの人」は母親なのではないでしょうか。「彼女の娘とは思えないな」という台詞があることもそれを裏付けます。
 アガットが昔書いていた魔法は平凡で陳腐なものだったようです。確かにアガットは自分の努力を認めることはあっても、自分に才能があると言ったことは一度もありません。自分に才能がないことがわかっているからこそ、血の滲むような努力を積み重ね、実力主義者になったのかもしれませんね。
 
 

【11話】

・知らざる者の意識を逸らすため魔法を描くアガット。
 アガット「私はキーフリーが一番弟子、魔法使いアガット・アークロム」
 ここで一番弟子の意味を調べてみましょう。

 デジタル大辞林:
  1.弟子の中で、最も早くその師匠についた者。
  2.弟子の中で最も優れた者。
 精選版 日本国語大辞典:
  弟子の中で最も優れた者。
 
 う〜ん……どっちの意味なのか気になります。大辞林で言う1の意味ならキーフリーが最初に取った弟子はアガットということになりますが、2の意味ならキーフリーの最初の弟子はわからないままだからです。
 今のところキーフリー(とオルーギオ)との出会いが描かれているのはリチェだけなので、アガットやテティアがどういうきっかけで弟子になったのかは不明なままですが、とりあえず今回は大辞林の2の意味説を採用することにします。最初の弟子にアガットって難易度高すぎるもんな。

・魔警団に拘束されるココとアガット。
 辺り一面が砂に変わってしまい、禁止魔法を使用した疑いでイースヒース副団長直々に拘束されてしまいます。砂に変わったのはココの持っている魔墨(イグイーンの血入り)が原因なのですが、そんなことは誰も思いつきません。
 イースヒースは推定有罪の原則で、ココの記憶を消そうとします。おそらくココが元知らざる者だということもわかっていての所行だと思われますが、それにしてももうちょっと話を聞いてほしいですね。
 
 
今回はここまで。次回に続きます。
だんだん健気なイグイーンさんに愛着が湧いてきました。